| 遅くなりましたがレビューです。 言葉が上手く見つからず、冗長になってしまい申し訳ありません。 今後はもっとうまくまとめられるように努力します。
【死神探偵スズキ】レビュー
作者:ヒガタ氏 ジャンル:現代等身大オリジナル プレイ時間:13話+α(7〜8時間)
【解説】 ダークな雰囲気漂うオカルト探偵アクションシナリオ。 死神に憑かれた薄幸の探偵スズキが数々の難事件に挑む。
【感想】 「無駄が無い」、とにかくこの一点に尽きるシナリオ。 シナリオ、キャラクター、演出など全ての要素が高いレベルでまとまっており、完成度の高さは類を見ない。 クリア後はまるで良く出来た映画かドラマを見終えた時のような、ある種の余韻と満足感を感じられた。
第1のポイントとして、「死神探偵」という作品としての雰囲気作りに成功している点が挙げられる。 キャラクターのアイコン、イベントシーンの音楽、セリフのやり取りは落ち着いた感じで統一されており、 作品のカラーを損なわない配慮が一貫して見受けられた。 個々の素材の出来の良さは特筆すべきことだが、それ以前にここまで見事に作り上げられた作品の 『雰囲気』が、何よりも印象に残る。 プレイ後しばらく時間が経ち、キャラクターの顔を思い出せなくても雰囲気は思い出せる、そんな作品で あることは間違いない。
第2のポイントとして、いわゆるB級ハードボイルド路線が挙げられる。 オカルトというスパイスこそ効いているものの、キャラの立て方や台詞回しは古典的私立探偵もののまさにそれであり、 松田優作の「探偵物語」や他の私立探偵小説を知っている人間にはニヤリとさせられるような場面が幾つもあった。 先に挙げた死神探偵という雰囲気と、このいかにも安っぽいハードボイルドが見事にマッチしており、本作独自の味を 出すことに成功している。 普段ハードボイルドものに馴染みのある人も、そうでない人も楽しめるのではないだろうか。
第3のポイントは物語の構成の上手さ。 全13話という構成を起承転結に当てはめるなら、1話が「起」、2〜11話が「承」、12話で「転」、続く13話に「結」。 各話自体はそれぞれが1話完結(一例外あり)でありながらも、全体を通して一つの流れを形成している。 特に1、12、13話は短い話の中でもキチンとその役目を果たしており、構成の巧みさが感じられた。 また、「承」にあたる2〜11話にはさりげなく伏線が散りばめられており、最後にアッと言わせる仕掛けを増強させている。 プレイ中に感じた疑問やフラストレーションを、最後に根こそぎぶち撒けるスッキリ感は実に見事。
この他にも、戦闘シーンのケレン味の効いたBGMや、独自システムと絶妙な難易度など、様々な要素が作品としての 魅力を高めており、また無駄がないことが完成度の高さに繋がっている。 小さく良くまとまっている印象は否めないが、完成度という点においては類を見ないと思っていいかもしれない。
欠点を挙げるとすれば、キャラクターの心情描写が少なく、若干解りづらい部分があること。 SRCの構成上仕方のない事だが、小説であれば地の文、ドラマならカメラアングル等を駆使して表現するキャラの心情が、 本作では主に台詞と「……」や「――」などの間、人形劇でのアクションで表現されている。 巻き戻しが出来ず、一定のペースで進むSRCではこの微妙な心情を理解する前に話が進んでしまうことも多く、2回目の プレイで改めて気付く場面も少なくなかった。 下手に付け足せば作品の味が損なわれるだけに、量よりも質を高めるのが正解かもしれない。
あとは5話の2件目、3件目の殺人現場が違う場所だということが初見では理解できず。 ここに限らずHide処理時はプレイヤーに与えられる情報が極端に制限されるので注意。 逆に、7話のような図を用いた解説は非常に解りやすくて好印象。
【総評】 第1話の雰囲気が気に入ったのであれば即プレイ推奨。 物語の構成や演出などのレベルも高いので、後学のためにプレイするのもOK。 13話+αというほど良い長さもプレイヤーにとっては嬉しいところ。 「パルプフィクション」等のハードボイルド好きにもお勧め。
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